理事長所信

第54代理事長
本多 紀元

2023年度スローガン

2023年度理事長所信

はじめに

 丹波篠山青年会議所は1970年に設立されてからこれまで53年もの間、先輩諸氏の意思を受け継ぎながら、丹波篠山市とともに歩み続けてきました。しかし今、このまちには1つの大きな危機が訪れています。丹波篠山市は2012年以降、人口が減少し続けており、少子高齢化も相まって持続可能性が低下しています。このままの状態が続けば、このまちが消滅してしまうであろうことは、誰の目から見ても明らかであり、そのためにこのまちに住む人たちは日々まちづくりを行っています。しかし、それでも人口は減少し続けているのです。目の前の課題を解決するために、日々の努力を積み重ね、KPI達成に一喜一憂するだけでは、このまちを変えることはできません。

 このまちが今必要としているのは、これまでどんなまちもしなかったような、丹波篠山市の持つ本質を最大限に活かしたイノベーションです。今こそ、私たち丹波篠山青年会議所は、このまちにイノベーションを起こす組織として、持続可能なまちづくりを目指して運動を行っていきましょう。

 

本質と持続可能性

 世の中はいつの時代も変化を続けており、その節々で転換期とよばれる大きな時代の動きが訪れます。近年では、リーマンショックや東日本大震災、新型コロナウイルス感染症がそれにあたります。そのような大きな時代の動きの中で、変わっていくものもあれば、変わらないものもありました。私はこの変わり続ける世の中で、いつの時代においても変わらないものの根本原因が本質であると考えており、その本質を見つけるために必要なことは、批判的思考であると考えています。

 私たちは今の世の中にあるものごとを無批判に受け入れるのではなく、多様な角度から検討し、論理的・客観的に理解する批判的思考によって本質を追求していかなければなりません。その本質を核心に据えることで、時代の変化に耐えうる持続可能なまち、ひと、仕組みを作ることができるのです。

 まちのイノベーションには大きな変化が必要です。そのために失うものもあります。しかし、これまでの歴史の中で変わらなかった本質を土台にすれば、丹波篠山らしいまちづくりができるはずです。

 

組織のイノベーション

 多くの組織であれば優秀なリーダーをトップや右腕に据えながら年度を通して組織運営を行うのに対して、JCではそれを行わず、理事長を含め、組織図が1年で大きく変わる単年度制の組織運営を行っています。単年度制の組織運営ができるのは、正会員が全員同じ年会費を払って運営されるため、すべてのメンバーに平等の権利が与えられているからです。単年度制のJCでは、新しい視点や新しい発想を得るための機会がメンバーに対して平等に与えられますが、その一方で中長期的戦略が立てづらいことやそれに伴うルールの形骸化が起こりやすいなどの短所も存在します。

 私たちはこの組織の本質を改めて理解し、単年度制でありながらもまちを持続可能にできる真の組織を作らなければなりません。組織のあるべき姿を描きながら、守らなければならないものと、変えていかなければならないものを明確にし、組織自体にイノベーションを起こしていきましょう。

 

ネットワークの拡大

 持続可能なまちを作ることは簡単なことではなく、私たちだけの力で実現することは不可能です。大きなものごとを動かすためには大きな力が必要です。そのために、私たちはこのまちのイノベーターとして運動を行いながら、同じ志を持つ仲間を集めたり、同じ使命を掲げる組織とのパートナーシップを形成することで、大きなネットワークを作っていくことを目指します。

 私たちがネットワークを作っていく上で欠かせないのは、組織としての価値を伝え、共感してもらうことです。なぜなら、人には人それぞれの価値観があり、その価値観によって動くものだからです。丹波篠山青年会議所のメンバーは様々な価値観を持つ個性豊かな青年の集まりです。個々の価値観を集約することで、より多くの人に共感してもらえる価値を生み出すことができます。それらの価値を明確にしていきながら、個々の強みを活かし、人の心を動かすほどにインパクトのある事業を展開し、その運動をオフラインだけではなくオンラインを活用した広報を通して多くの人に伝えていきましょう。

 

次世代の育成

 少子高齢化が進むこのまちでは、若者の人口流出に伴う担い手不足が問題となっています。私たちは、まちづくりを行う青年の組織として、次世代のまちづくりを担う青少年の育成が必要です。とはいえ、将来なりたいものを決めるのは、子供たち自身であり、私たちはその選択に介入するべきではありません。しかし、人生の先輩として、子供たちが持つ疑問に答えたり、可能性を広げる手助けをすることはできます。私たちは子供たちとの対話を通して、子供たちの郷土愛を少しずつ育んでいくことができます。そのために、子供たちに対して情報を発信したり、子供たちが参加しやすい対話の場を作っていきましょう。

 

向き合える仲間づくり

 JCは会員の年会費で運営されているという性質上、私たちの活動は個々の主体性に委ねられています。個人の主体性は、その個人が持つ目標を達成するときに発揮されます。組織の目標を達成するために、私たちはメンバーの持つ価値観や目標を共有していきながら、支え合い、まちだけではなく私たち自身の人生が豊かになるような仲間づくりを行っていきましょう。

 私たちはまだまだ未熟で不完全な青年の集まりです。しかし、いつの時代も世の中にイノベーションを起こすのは若い力です。未熟だからこそ、既存の概念に囚われない新しい考え方や新しいアイデアを生み出すことができるのです。私たちは自分たちが持つ若い力を信じ、個々の強みを活かし、足りない部分は支え合い、本音で語り合う関係を通して、決して一人ではなしとげられないような大きなものごとを成し遂げていきましょう。

 

結びに

 このまちを消滅の危機から救うのは、他の誰でもない、私たちです。そのために私たちは何をするべきでしょうか。どのようにあるべきでしょうか。

 目の前にある課題を解決するだけではたどり着けない。当たり前を当たり前と捉えるだけでは気づけない。大きな理想を描き、常識を疑い、力を合わせることで初めて、たどり着ける答え。それが本質です。私たちはそんな本質を追求するべく、1年間全力でまちづくりを行っていきましょう。